心地よい川風に吹かれながら、歴史的建築物やアートを楽しめるのが、大阪・中之島。淀川の分流・大川が北の堂島川、南の土佐堀川の二筋に分かれ、その間に自然と生まれた中州が東西約3kmにわたり舟の形のように広がっています。江戸時代から2本の川の交わる水運の集積地だった中之島は、大阪市の行政・経済・文化の中心地として発展してきました。その礎を築いた先人たちの心意気が今も息づく「水の都」の魅力をたどってみましょう。
新旧融合の街並み。中之島で名建築を見学する
日本の名だたる建築家が手掛けた中之島の名建築。その魅力の一つは、伝統と革新が水辺の景観に溶け合っているところにあります。現代までの歩みを伝える建築を、東から西へ見ていきましょう。
京阪中之島線「なにわ橋」駅、Osaka Metro堺筋線・京阪本線「北浜」駅、Osaka Metro御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」駅からスタートすると、巡りやすいルートです。
こども本の森 中之島
中之島の東端に架かる難波橋のたもとに、2020年に開館した「こども本の森 中之島」。大阪で生まれ育った世界的建築家・安藤忠雄氏(1941~)が「本や芸術文化を通じて、子どもたちが豊かな創造力を育む施設を中之島公園内に整備したい」と自ら設計・建設し、大阪市に寄贈した文化施設です。
3階建ての建物は、安藤建築の特色である打ち放しコンクリートと川に沿って弓なりにカーブを描く外観が特徴です。内部は全面本棚の壁や迷路のようなブリッジ通路、吹き抜けがあり、子どもたちが喜ぶ遊び心にあふれた空間が広がっています。
本から印象的なアフォリズム(短文)を抽出し、立体文字にした「言葉の彫刻」が随所に展示
子どもたちが本を読み始めるきっかけをつくる
住所 | 大阪市北区中之島1-1-28 |
開館時間 | 9:30~17:00 |
休館日 | 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌平日は休館)蔵書整理期間・年末年始 |
留意事項 | 入館無料。90分完全入替制。事前予約枠と当日先着枠あり。入館方法詳細は、公式Webサイトを参照 |
公式Webサイト |
大阪市中央公会堂
中之島のシンボルといえる、赤煉瓦が水辺に映える大阪市中央公会堂。「義侠の相場師」と呼ばれた株式仲買人、岩本栄之助(1877~1916)が「大阪に大きなホールを」と、当時100万円(現在の価値で約50億円)を大阪市に寄付。設計コンクールで選ばれた当時29歳の岡田信一郎の提案を基に、辰野金吾と片岡安が実施設計に当たり、1918年に開館しました。
大正時代のネオルネッサンス様式を基調とした鉄骨煉瓦造の地上3階、地下1階。壮麗な大集会室や、アーチ型の高い天井のホールを備える中集会室、『日本書記』を題材にした特別室の天井画などが見どころ。2002年、国の重要文化財に指定されました。
地下1階事務室でオリジナルグッズを販売しているほか、館内にはレストランがあり、ゆっくりと過ごせます。レストランでは、英国発のインテリアブランド・トム・ディクソンと、飲食店を運営するバルニバービデザインスタジオがコラボレーションした店内で、ミシュランスターシェフによるフレンチやイタリアンを堪能できます。
住所 | 大阪市北区中之島1-1-27 |
開館時間 | 9:30~21:30(予約受付時間は9:30~20:00)、毎月第4火曜日(祝日の場合は直後の平日)および、12月28日から翌年1月4日 |
留意事項 | 見学できるのは地下1階の「展示室」と「自由見学エリア」のみ。 公会堂スタッフによる特別室と展示室を案内するガイドツアーを開催(不定期開催、事前申込要、料金500円~) |
公式Webサイト |
大阪府立中之島図書館
中央に青銅の円屋根を頂き、本館正面入り口に4本の石柱がそびえる「大阪府立中之島図書館」は、神殿のような佇まいを見せます。外観は均整の取れたルネッサンス様式であるのに対し、内部の空間は曲線や華麗な装飾を多用するネオ・バロック様式。本館の緩やかなカーブを描く階段や凝った意匠が施された一対の柱などがその特色を伝えています。
大阪の財閥・住友家第15代当主・住友吉右衛門友純(すみともきちざえもんともいと 1865~1926)から図書館の建物と図書購入費が大阪府へ寄付されたのを受け、1904年に完成。1922年に両翼の建物が増築されました。開館50周年を記念して歌人・川口順が詠んだ正面脇の歌碑に、図書館に託した大阪人の希望が刻まれています。
「難波津の まなかに植ゑし 智慧の木は 五十年(いそとせ)を経て 大樹(おおき)となりぬ」
住所 | 大阪市北区中之島1-2-10 |
開館時間 | 月~金曜日9:00~20:00、土曜日9:00~17:00 |
休館日 | 日・祝日、3、6、10月の第2木曜日、年末年始 |
留意事項 | ガイドツアーを毎週土曜(11:30~、13:30~、15:30~)開催。 各回30分前より先着順にて受付(事前申込不要、先着10人)。参加費500円。 |
公式Webサイト |
日本銀行大阪支店
南北に伸びる御堂筋に面して重厚な趣を見せる日本銀行大阪支店。ドーム型屋根とその両側の三角屋根に、重厚な装飾を施した玄関ポーチが目印の旧館は1903年に完成しました。
「日本近代建築の父」と呼ばれる辰野金吾(たつのきんご 1854~1919)らが、ベルギー国立銀行などを参考に設計した、古典主義の流れを受けた建物です。1982年、老朽化した旧館の復元・改築工事に合わせて新館が建設され、現在の姿になりました。旧館の外観の石積みや2階貴賓室の最高級のチーク材を使った壁面彫刻や扉、ステンドグラスなどは建築当時のまま。西洋化に取り組んだ明治の気風を今に伝えています。
住所 | 大阪市北区中之島2-1-45 |
営業時間 | 月~金曜日9:00~15:00(休祝日、12月31日~1月3日は除く) |
休館日 | 見学は事前予約制で、火・水・木曜日。 時間は10:00~11:00、13:30~14:30。 所要時間は約60分。ただし、祝日、年末年始<12月31日~1月3日>、行事等の実施のため支障のある日<回>を除く)。 料金無料。 見学希望日の90日前から14日前までに予約サイトから申し込みが必要。 |
公式Webサイト |
大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)
堂島川にかかる堂島大橋のほとりに建つ大阪府立国際会議場の設計は、世界的建築家の黒川紀章(1934~2007)。「グランキューブ大阪」という愛称の通り、キューブ(立方体)型の洗練された建築が特徴的です。
地上13階、地下3階の鉄骨造。世界の人・モノ・情報が行きかう総合交流施設として2000年にオープン。メインホールの壁や天井は折り紙、エントランスホールの壁は松の枝がそれぞれイメージされるなど、内装は「和」のデザインが採用されています。地球をイメージした半球形で黒川氏の意匠が凝らされた空間が広がる特別会議場は、2023年10月にG7大阪・堺貿易大臣会合のメイン会場となりました。
住所 | 大阪市北区中之島5-3-51 |
開館時間 | 9:00〜21:00 |
休館日 | 12月29日~1月3日 |
留意事項 | 2023年12月1日~2024年3月31日まで大規模修繕工事に伴い、臨時休館。 |
公式Webサイト |
現代、西洋、古美術も。中之島の美術館でアートを鑑賞する
中之島には特色のある美術館が点在し、アート散策もおすすめです。「大阪中之島美術館」は、大阪ゆかりの洋画家・佐伯祐三の作品が充実しており、「国立国際美術館」は国内外の現代美術8,200点(2022年3月時点)のコレクションを誇ります。
目利きの選りすぐりの作品を堪能するなら、朝日新聞の創業者が収集した刀剣や茶道具などを展示する「中之島香雪美術館」、安宅産業の元会長による東洋陶磁コレクションを核とした「大阪市立東洋陶磁美術館」(2023年12月時点休館中、24年春リニューアルオープン予定)など、多彩なアートに出会える美術館が充実しています。
食とアートの融合。中之島に程近いレストランで絶品フレンチを味わう
食事でもアートを味わいたい時、おすすめのレストランがミシュラン常連の「ルポンドシエル(LE PONT DE CIEL)」です。温故知新のフランス料理は、中之島の旅にもぴったりです。
ルポンドシエル(LE PONT DE CIEL)
「ルポンドシエル」とは、フランス語で「天架ける橋」の意味。「お客様のくつろぎと味覚を結ぶ文化の架け橋でありたい」という願いを込めて名付けられました。中之島から淀屋橋を渡った北浜エリアにあります。
「橋」をコンセプトに設計され、白い壁の通路が続くプライベートルームや薪窯などもあり、隠れ家的な空間が非日常を演出しています。入り口にはイギリスの彫刻家アントニー・ゴームリーの人物像が設置され、店内では中之島と縁の深い具体美術協会(GUTAI)のメンバーによる作品など数多くのアートが空間に彩りを添えます。伝統と進化をテーマに新たな味を追求している創作フレンチのコースのランチは12,000円~、ディナーは17,600円~(いずれも税込)。
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住所 | 大阪市中央区北浜3丁目5番29号 日本生命淀屋橋ビル B1 |
電話番号 |
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営業時間 |
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定休日 | 日曜/月曜/祝日 |
留意事項 | 全面禁煙 【ドレスコード】 ランチタイム:スマートカジュアル ディナータイム:スマートエレガンス ※男性のTシャツ、ハーフパンツ、サンダルなどの軽装での来店は不可 |
公式Webサイト |
天空に広がる極上のアート空間。中之島のラグジュアリーホテルに滞在する
中之島の旅で得た感動の余韻に浸って眠りにつくなら、ラグジュアリーホテル「コンラッド大阪」をご提案。389点以上のアート作品が飾られた館内は、まるで宿泊できる美術館です。
コンラッド大阪
“Your Address in the Sky”をコンセプトにしたコンラッド大阪は、豪華なシャンデリアが輝く1階のエントランスからエレベーターで中之島フェスティバルタワー・ウエストの最上階40階に上り、チェックインします。
ホテルの全客室、レストラン、宴会場、スパ&フィットネス、インドアプール、会議室などの全施設から、地上200メートルのパノラマビューを楽しめます。40階のロビーフロアを飾る高さ約5メートルの球体が連なるアート作品は、彫刻家・名和晃平が風神雷神に触発されて手がけた《Fu / Rai》。客室やダイニングは、モダンデザインに和を取り入れた佇まいの空間で、旅の疲れを癒やせそう。スパやフィットネス、プールなども完備しています。
住所 | 大阪府大阪市北区中之島3-2-4 |
電話番号 | 06-6222-0111 |
チェックイン | 15:00 ~24:00 |
チェックアウト | 12:00 |
留意事項 | スタッフによる外国語対応あり |
公式Webサイト |
中之島を歩いて体感する、水都・大阪が受け継ぐエネルギー
水都・大阪の魅力をあらためて実感できる場所が中之島です。歴史が集積するエリアを歩けば、先人たちのパワーにより大阪の繁栄が築かれてきたことが肌身に感じられます。そして、現代の建築やアートの革新性に触れると、そのエネルギーが受け継がれつつ、日々新しい活力が生まれていることに気づきます。新旧の魅力が共存し、活気に満ちた中之島の風土に触れると、きっと明日を生きる元気が湧いてくるでしょう。