市街地からすぐの距離に山と海が共存し、美しく調和している神戸の街。山側の神戸市立王子動物園から、なだらかな坂を下っていくと、海側の兵庫県立美術館に到着します。この約1.2km続く道は、2010年に当時の兵庫県立美術館館長の発案により、兵庫県と神戸市が協力のもと「ミュージアムロード」と名付けられました。ミュージアムロードには、ヤノベケンジや名和晃平など、著名なアーティストの斬新な作品が数多く出現します。山と海と人々の生活を感じながら鑑賞できるアート作品は、室内とはまた違う魅力を放っています。
神戸の街並みや海に調和するアート作品
人々が行き交い、車が通る道路沿いに突然現れるアート作品の数々。斬新だったりカラフルだったり、さまざまな表現を前に「次はどんな作品が現れるの?」と歩くのが楽しくなります。
スタイリッシュなサインモニュメント《MUSEUM ROAD》榮元正博
JR「灘」駅の改札を出て南側の階段を下りると、すぐにミュージアムロードのサインモニュメントが現れます。神戸芸術工科大学教授を務める榮元正博(えいげんまさひろ 1969〜)が2018年に手掛けた作品です。光によって風合いが変わる、波打つようなサインに惹きつけられます。
太陽の光で多面的に光る《風舞》松永勉
ミュージアムロードを南側に進んで行くと、阪神電鉄「岩屋」駅前に設置された印象的なオブジェと出会います。彫刻家・松永勉(1948〜)が1990年に制作した《風舞》です。ステンレスの素材に周囲の景色が写り、太陽の光で反射する様子は、まさに舞っているように見えます。車道側に面して遊歩道があるので、この位置から撮影するのがおすすめです。
“美かえる”にちなんだ、カラフルな阪神「岩屋」駅
《風舞》の背景にある、カラフルにデコレーションされた岩屋駅も目を引きます。この装飾は、ミュージアムロードのシンボルオブジェ「美かえる」と色を合わせており、白の線で描かれたイラストは、地元の小学生によるものだそう。駅員の方によると、「約10年前から装飾されている」そうです。付近の自動販売機や、宝くじ売り場も同じカラーで装飾されていて華やかです。岩屋駅も、ぜひ撮影しておきたいスポットです。
緑の巨大な怪獣!?《PEASE CRACKER》椿昇
阪神高速道路の高架をくぐり、さらに直進すると巨大なアート作品が現れ、その強烈なビジュアルに驚かされます。鮮やかなグリーンの物体は、サヤエンドウをイメージしているのだとか。サヤから落ちた豆の形のオブジェは、椅子として座ることができます。かつて神戸に在住していた現代美術家の椿昇(1953〜)が、2014年に制作しました。高さが約4m、幅約8.6mと、是非間近で体験してもらいたい迫力です。反対側は赤い造形が目立ち、印象が変わります。
兵庫県立美術館やミュージアムロードのシンボル
《美かえる》フロレンティン・ホフマン
前方を進んでいくと陸橋になり、灘駅の改札を出た途端、遠目に見えていた兵庫県立美術館の屋上に設置された《美(み)かえる(Kobe Frog)》が近づいてきます。オランダのアーティスト、フロレンティン・ホフマン(1977〜)によって2011年に制作されました。高さ約8m幅約10mのカエルのバルーンはインパクト大。公募で名付けられたこの名前は、阪神・淡路大震災の復興を意味する復活の「かえる」と、美術館を出た後に「見にかえる」と、継続して来館してもらいたいという願いが込められています。写真撮影は、陸橋からがおすすめ。
立ち姿が力強い、輝く少女の像!
《Sun Sister》愛称:“なぎさ” ヤノベケンジ
兵庫県立美術館の海側へ回ると、大階段の下にシルバーに輝く大きな少女の像《Sun Sister》が登場します。この作品は、2015年に現代美術家のヤノベケンジ(1965〜)が阪神・淡路大震災20年のモニュメントとして制作しました。少女が手にするのは、未来の希望の象徴である「輝く太陽」。高さ約6mの少女像は迫力満点で惹きつけられます。愛称は“なぎさ”で、人気の高い作品です。
支え合う形が印象的な《きいろとぶるう》元永定正
《Sun Sister》のすぐ隣にあるのが、色鮮やかな2色が映えるアート作品です。前衛美術作家、絵本作家として国内外で知られる元永定正(もとなが さだまさ 1922〜2011)が2011年に手掛けました。絵本の世界を彷彿とさせる、温かみを感じる作品です。
階段側から撮影すると、《Sun Sister》と《きいろとぶるう》の2つの作品を後ろから、海の景色とともに撮影できます。
公園の緑と調和する《Ether(family)》名和晃平
大階段のすぐ横にあるなぎさ公園エリアには、緑と溶け合うように佇むアート作品があります。《Ether(family)》は、2021年に現代美術家の名和晃平(1975〜)が手掛けました。高さ約4m、3.3m、2.6m、1.7mの4点が組となっています。滴(しずく)が地に落ちて広がる様子を3Dモデル化し、上下を反転させて積み重ねた彫刻作品です。寄り添う4つの彫刻は、家族を表しているようです。
夕暮れに佇む姿が郷愁を誘う《Animal 2021-01-B(KOBE Bear)》三沢厚彦
なぎさ公園内には、《Ether(family)》と同じ2021年に設置された作品があります。現代美術家の三沢厚彦(1961〜)が手掛けた、巨大なブロンズ製のクマの彫刻作品です。顔をよく見ると、右目は緑、 左目は青。六甲山の緑と空の青が映り込んでいるのを表現しているそうです。ちょうど撮影の時間が夕暮れだったので、ノスタルジックな雰囲気になりました。
建築家のメッセージが込められた《青りんご》安藤忠雄
美術館内の回廊やテラス部分は無料で入ることができ、アート作品も鑑賞できます。海側のデッキには、美術館を設計した建築家・ 安藤忠雄(1941〜)が2018年に手掛けた巨大な青いりんごのオブジェが。繊維強化プラスチック製で、高さ・幅・奥行きが約2.5m。作品の横のパネルには、「目指すは甘く実った赤りんごではない、未熟で酸っぱくとも明日への希望に満ちあふれた青りんごの精神です」という安藤氏のメッセージが寄せられていました。
絶えず動き続ける《遙かなリズム》新宮晋
同じく美術館内の海側のデッキにあるのは、オレンジ色の4枚の羽がゆっくりと回転しながら、絶えず姿を変えるユニークな作品。風や水など自然の力で動く作品で世界的に知られる新宮晋(しんぐうすすむ 1937〜)が、1979年に手掛けました。背後の風景と溶け込んで、まるで一つの作品のように見えます。素材は鋼鉄・アルミニウムで制作されています。
アート鑑賞の合間に立ち寄りたい、
ミュージアムロード周辺のおすすめカフェ・レストラン情報
ミュージアムロードを歩いて、一息つきたくなったらお茶やお食事はいかがですか?ここでは、ミュージアムロード近辺でおすすめのカフェやレストランをご紹介します。
美かえるサンドのメニューも!炭火珈琲が美味しい「リコー」
「リコー」は落ち着いた雰囲気で、とても居心地が良い喫茶店です。兵庫県立美術館帰りの来店者も多いそう。店内には美術館の過去の展覧会図録がラックに並び、自由に見ることができます。注目メニューは、ミュージアムロードが生まれた際に発案された「美かえるサンド」。香ばしく焼いたパンの中にトマトとバジルソース、チーズがサンドされていて、色合いで美かえるが表現されています。コクのある炭火コーヒーとの相性もぴったりです。
リコー
住所 | 兵庫県神戸市灘区岩屋北町5-1-1 |
最寄駅からのアクセス | JR「灘」駅から徒歩約4分。阪神電鉄「岩屋駅」から徒歩約1分。 |
電話番号 | 078-882-6648 |
営業時間 |
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定休日 | 月曜日、不定休 |
異国情緒あふれる台湾風「担担麺専門店 DAN DAN NOODlES.ENISHI」
赤い提灯が異国情緒を醸し出す「担担麺専門店 DAN DAN NOODlES.ENISHI」は、台湾風麺の人気店です。看板メニューの「担担麺」は、具がたっぷり載った汁なしタイプ。辛さが選べるので、辛いのが苦手な人も食べられます。ラー油がかかったスパイシーな味が特徴の「台湾風からあげ」もおすすめ。日本風からあげとはまた違った、本場台湾の美味しさが味わえます。
担担麺専門店 DAN DAN NOODlES.ENISHI
住所 | 兵庫県神戸市灘区岩屋北町5‐2‐32サニーハイツ灘1F |
最寄駅からのアクセス | JR「灘」駅より徒歩約3分、阪神電鉄「岩屋駅」より徒歩約3分 |
電話番号 | 078-861-7776 |
営業時間 | 11:00~22:00 |
定休日 | 月末火曜日の15時以降 |
公式Webサイト |
ミックスフライは売り切れることも!地元民が愛する「洋食SAEKI」
「洋食SAEKI」は、地元の幅広い年齢層から愛されているお店です。大きな海老フライが特徴のミックスフライは、すぐに売り切れてしまうほどの人気。あじフライは、あじの入荷が限られているので、予約した方が確実に食べられるそうです。
ランチメニューとディナーメニューがほとんど変わらず同じ価格で提供している点も、メニューの人気ぶりを感じさせるポイントです。
洋食SAEKI
住所 | 兵庫県神戸市灘区岩屋北町5-2-13SIハイツ岩屋 |
最寄駅からのアクセス | JR「灘」駅より徒歩約3分、阪神電鉄「岩屋駅」より徒歩約3分 |
電話番号 | 078-882-2667 |
営業時間 |
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定休日 | 月曜、火曜(祝日でも休み) |
神戸の街を感じながらウォーキング気分で楽しめるアート
兵庫県では神戸市と協力しながら、兵庫県立美術館を核とするミュージアムロードや、六甲山、海岸など、多様な観光資源の情報発信を通じて、沿線のにぎわい創出を図っています。ミュージアムロードで鑑賞できるパブリックアートは、天候や時間帯によって印象が変わるのが魅力の一つ。また、自分好みの角度を見つけて撮影するのがおすすめです。歩くのに程よい距離なので、のんびり散歩しながら街中のアート作品を楽しんでみてください。
ミュージアムロード 基本情報
最寄駅 | JR「灘」駅、阪急電鉄「王子公園」駅、阪神電鉄「岩屋」駅 ※兵庫県立美術館から神戸市立王子動物園までの南北約1.2Kmの道です。 |