大阪府松原市にある「読書の森」は、2020年にオープンした新しい図書館。
街に溶け込むユニークなデザインが評価され、グッドデザイン賞(2020年)や日本建築学会作品選奨(2022年)を受賞しています。
水面に浮かぶようにつくられたその姿はまるで「お濠の中の古墳」!重厚感のある赤茶色の建物は、遠くからでも目を引きます。
今回は松原市民憩いの場として愛される読書の森について、館長の林敏一さんから話を伺い、人気のスポットやスタッフおすすめのスポットをご紹介します。
(取材・文:山本 知恵)
読書の森について
松原市民松原図書館「読書の森」は旧施設の老朽化に伴い、2020年に現在の場所へ移転・新築オープンしました。「読書の森」という名前は、地元小学生からの公募によって付けられたのだそうです。
約30万冊の資料を所蔵しており、1階は一般書、2階には雑誌・新聞が読めるブラウジングコーナーや自習室、3階には児童書が置かれています。
読み聞かせなどのイベントを盛んにおこなっており、毎月約20,000人の方が訪れているという読書の森。2025年1月26日には開館5周年を記念して、設計を手がけた「MARU 。architecture」による講演会が開催されます。
【読書の森】
〒580-0044 松原市田井城3-1-46
電話番号 072-334-8060
アクセス 近鉄南大阪線 高見ノ里駅より徒歩7分
※駐車場なし。車で来館する場合は周辺の民間駐車場を利用。
営業時間 9:00~21:00
休館日 3月・8月・12月をのぞく第3木曜日、年末年始
優れたデザインで数々の賞を受賞する「読書の森 」
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撮影:関拓弥
松原市には国内で5番目に大きい前方後円墳「大塚山古墳」があります。また、周囲の堺市には「仁徳天皇陵古墳」、羽曳野市には「応神天皇陵古墳」などがあります。読書の森は、こういった歴史豊かな環境からインスピレーションを受けて設計されました。
また、「水の中に建つ図書館」という構想は、周囲にため池が散在している街の風景から生まれたのだそう。
当初はため池を埋め立ててつくることが想定されていたものの “長い時間軸でこの場所のことを想像すると、ため池という環境を受け入れながら、その中に力強く建ち続ける建築をつくることこそが街の歴史に寄り添っていくあり方であるように思われた。”(引用:GOOD DESIGN AWARD|受賞ギャラリー|松原市民松原図書館)
外壁には通常の約3倍の厚さである600mmの鉄筋コンクリートを使用し、あえて色ムラを残した仕上がりに。断熱性と耐震性を上げつつ、自然になじむ外観となっています。
グッドデザイン賞、日本建築学会作品選奨を含む数々の賞を受賞している読書の森。設計は「MARU。architecture」が手がけました。
「MARU。architecture」は、2010年に森田祥子氏が設立し、2013年に高野洋平氏が加わって共同主宰となった建築設計事務所。図書館や文化施設のような、街づくりの核となる建築物を積極的に手がけています。
読書の森の楽しみ方!おすすめスポット紹介
来館者に人気のくつろぎスポット
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来館者に人気なのは、2階雑誌コーナーのソファー。水の色を思わせる深い色合いが、くつろぎの空間にぴったりですね。若い方から年配の方まで、多くの方が利用されているそうです。
また、子連れの方には3階の絵本コーナーも人気。芝生色のカーペット上でおこなわれる読み聞かせイベントには、多くて20人以上の親子が集まるのだそう。
スタッフからのおすすめスポット
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こちらは池の波紋が映ってゆらめく1階の天井。池に降り注ぐ日光が反射して、大きな西向きの窓から差し込みます。
書籍を光から守るために夕方にはカーテンを閉めるので、波紋のゆらめきを楽しみたい方はお昼前から2時ごろに訪れてみてくださいね。
また、夕日が見える3階の子供向け辞書コーナーもおすすめなのだそうです。
「読書の森」館長の林さんは「いずれも1日中図書館にいるスタッフならではの意見。読書で目が疲れたとき、ふと目線をあげて癒されていただければ」とおっしゃっていました。
読書の森で過ごすくつろぎのひととき
読書の森では、コロナ禍が収束するにつれ、子供達が心地よく過ごせる場所を提供したいという思いから、これまで子供向けのイベントに力を入れてきました。
それに対して「子供向けイベントがある程度かたちになった今、これからは大人や障害のある方にも対象を広げてさまざまなイベントを展開していきたい」館長の林さんは、そうおっしゃいます。
Wi-Fiiや、バリアフリー環境を備えた読書の森だからこそ、多様な方が楽しめる場になりそうです。
水上の図書館「読書の森」。自然と調和した静かなアート空間で読書を楽しみたい方は、ぜひ訪れてみてくださいね。