-アワード、ギャラリー、大阪・堂島のプロジェクトなど活動を推進-
マンションブランド「Brillia(ブリリア)」を手掛ける東京建物株式会社は、暮らしを彩るアート活動「Brillia Art」に力を入れてきました。ブランド誕生から2023年で20年を迎え、国内各地で積み重ねてきた活動の集大成とも言えるビッグプロジェクトが大阪・堂島で進行中です。これまでの「Brillia」の歩みや取り組みなどについて担当の中山佳彦さん(住宅事業企画部CRM室 課長)と大髙菜未さん(住宅事業企画部CRM室 主任)にお話を聞きました。
「Brillia Art」の3本柱は
「Brillia Art Award」「Brillia Art Gallery」「Brillia Art Works」
英語で「光り輝く」という意味のbrilliantに由来する「Brillia」は、「洗練と安心」というコンセプトを掲げています。「アート作品には、空間を洗練させる力があります。建物だけではなく、彩り豊かなライフスタイルも提案したいとの考えから、アート活動に取り組んできました」と中山さん。幼少期に家族でよく美術館巡りをしていたという大髙さんは、「アートが家族の会話のきっかけになっていました」と思い出を振り返ってくれました。
「Brillia」のアート活動は、次の三本柱を軸に展開しています。一つ目が2018年から始めた公募展「Brillia Art Award」。二つ目が2021 年に東京・京橋に開設したギャラリー「BAG-Brillia Art Gallery-」。公益財団法人彫刻の森芸術文化財団が企画監修を担い、「暮らしとアート」をテーマに様々な企画展を開催しています。そして三つ目が「Brillia Art Works」。マンションの共用部分にアート作品を設置したり、アートでラッピングしたピアノ「Brillia Art Piano」を各地に「旅」をさせたり、多彩な取り組みを行ってきました。
福祉実験ユニット「ヘラルボニー」のアーティストによるアートラッピングピアノ「Brillia Art Piano」
2023年12月25日まで国立競技場に隣接する都立明治公園に「滞在中」
中でも特に力を入れている取り組みの一つが「Brillia Art Award」。2018年から開始した若手アーティストを対象とする公募展で、東京建物八重洲ビル1階のギャラリースペースに展示できるサイズの作品プランを募集します。年間3~4点の入選作が決まると、応募者がそれぞれ実際に制作し、ギャラリーに約3カ月交代で展示。その中から大賞が決まります。
また、「Brillia Art Award」は開設以降、数多くのアーティストを輩出してきました。本年度は、Brillia20周年とBrilliaArtAward20作品目を記念して、過去に入選した20作品のうち「もう一度見たいアーティスト作品」を社内投票で1作品選出し、展示する取り組みも行います。2024年初夏展示予定。
過去の入賞作品はいずれも、空間を生かした多彩な世界が広がっています。とりわけインパクトが大きかった作品を尋ねると、中山さんが挙げたのは第1回「Brillia Art Award 2018」で大賞を受賞した塩見真由さんの作品《What?》です。「後ろ向きの白い犬の作品ですが、一体、どうやって搬入したのだろうと思うくらい巨大で、とにかく目を引きました」。屋外に面した展示スペースから見える正面は、犬の後ろ姿。何か言いたげな犬の顔は、屋内に入らないと見えない、ユニークさが光る作品です。
第1回「Brillia Art Award 2018」大賞受賞
塩見真由《What?》
応募作品は、ジャンル、手法、素材、形態などが自由なだけあって、どれも多彩です。いかに空間をデザインするのか。実現可能性も含めたアイデア勝負である点が特徴です。
「Brillia Art Award」は、注目のアーティストも数多く輩出しています。そのうちの高島マキコさんは、うごめく妖怪を表現した《Hopeful Monster》で「Brillia Art Award 2022」入選作品に選ばれました。。哲学・民俗学的なアプローチで身体と空間の関係性を探究する、プロダンサーとしての経歴も持つアーティストです。「Study:大阪関西国際芸術祭 vol.3」にも参加が決定しており、大阪のアクタス心斎橋店で1「Art Living」に出展予定。音や光、空気などの自然エネルギーを可視化し、テクノロジーと身体の関係性を表現するインスタレーション、立体・映像作品に注目です。
第16回「Brillia Art Award 2023」入選
高島 マキコ《Hopeful Monster》
「ArtSticker」との連携スタート
持続的な若手アーティスト支援として、新たな取り組みも近く開始する予定です。「Soup Stock Tokyo」の創業者として知られる遠山正道さんが設立した株式会社 The Chain Museumが運営する現代アートのプラットフォーム「ArtSticker(アートスティッカー)」があります。
歴代も含めて「Brillia Art Award」入選者は特別に無審査でアーティスト登録の権利が与えられます。
「アーティストと鑑賞者をつなぐサービスを通じて、作品の販売もできるようになるので、創作活動のサポートにつながると思います。同時に、『Brillia Art Award』入賞が誉れと思ってもらえるような賞として、ブランドアップしていくために新しい取り組みを進めています」と中山さんは期待を寄せています。
アートワークの集大成「Brillia Tower堂島」
新しい動きと言えば、アートワークでは、大阪・堂島の電通大阪ビル跡地に2024年5月完成予定の超高層複合タワー「ONE DOJIMA PROJECT」で、パブリックアートを設置するビッグプロジェクトが進行中。東京建物とシンガポールの不動産会社Hotel Properties Limitedが共同で開発するこのタワーは、地下1階・地上49階建て、高さ約195m。高層と低層部分に分譲マンション「Brillia Tower堂島」、中層部分に 高級ホテル「Four Seasons Hotel(フォーシーズンズホテル)大阪」が入ることになっています。
「旅とアート」をテーマにアート約50点を設置
「Brillia Tower堂島」には、共用部や公開空地など随所に、「旅とアート」をテーマに世界のトップアーティストによるアート約50点を設置する予定です。監修者には、キュレーターで美術評論家、森美術館前館長の南條史生さんを迎え、作品の選定や準備を進めてきました。公開空地に設置するパブリックアートは2点あり、うち1点は彫刻家・名和晃平さんが手がけることが決定しています。アートツーリズムの観点からもホットなスポットです。
「われわれのアート活動の具現化、集大成と呼んでもいい取り組みで、力を入れているプロジェクトです」と中山さん。東京建物はこれまでにも、その土地の記憶を現代アートでつなぐことを意識してきました。例えば、大阪・千里ニュータウンの「Brillia City 千里津雲台」では、建て替え前の団地周辺に立っていた桜の古木を使った球体のモニュメント(彫刻家・高須英輔さん制作)を、マンション共用部分に展示しています。
大阪・堂島は隣接する中之島と合わせて、歴史的建築物や美術館などが数多く点在する地域。大阪府や大阪市も、2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)や大阪関西国際芸術祭を契機に、「アートの街づくり」に本腰を入れています。現在推進している「ONE DOJIMA PROJECT」も、「宿泊施設の整備に着目した容積率緩和制度」が大阪で初めて適用され、大阪のシンボルとなるようなタワーを目指し開発が進んでいます。中山さんも「堂島・中之島をアートの街にしようとする行政の推進力や、アートが街全体に根づいている雰囲気を感じています」と語ります。変貌を続ける水都・大阪の新たな顔として、「ONE DOJIMA PROJECT」のパブリックアートは堂島にどのような新しい記憶をもたらすのでしょうか。
多様性の時代にこそ、正解のないアートを
「アートには『正解』がありません。感じたまま楽しめばいい。いろいろな考え方があっていい。そんなアートの存在は、多様性の時代である今こそ求められていると考えています」。そんな思いを胸に、「Brilllia」のアート活動に取り組む中山さんと大髙さん。この先、どんな展望を描いているのでしょうか。お二人によると、解体前の建物を生かしたアートや、マンションオーナー向けのアート作品の受注販売など、東京建物ならではの取り組みを検討しているそうです。多様な活動を通じて暮らしにアートの彩りを添える「Brillia」。今後の動きも目が離せません。
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